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入居企業インタビュー#67 りんくす合同会社 さん

今回の入居企業インタビューは、福島県産の日本酒を海外へ届ける輸出事業を中心に、地域活動や女性支援にも取り組むりんくす合同会社の代表、渡邊万里子さんです。
震災を経験したからこそ抱く福島への思い、そして大熊町とのつながりについて伺います。

Q1. 主な事業内容を教えてください

りんくす合同会社では主に福島県産の日本酒の販売・輸出、ECサイトの運営を行っています。

特に力を入れているのが、日本酒の海外輸出です。福島には、世界に誇れる酒蔵やお酒がたくさんあります。
現在は主に台湾の事業者と取引をしており、現地の店舗などへ福島のお酒を届けています。

加えて、まだ海外展開をしていない福島県内の酒蔵を探し、海外の事業者へ紹介する橋渡しの役割も担っています。
輸出には、手続きや配送の準備など、複雑な工程が数多くあります。

酒蔵側の負担をできるだけ減らせるよう、そうした実務面は私たちがまとめて対応しています。
目指しているのは、酒蔵には商品を箱で用意していただくだけで出荷できるような仕組みです。

最近では、福島の酒蔵がつくる梅酒を、海外向けにパウチタイプの“凍らせる梅酒”として販売する取り組みも始めています。瓶での出荷が難しい地域にも届けやすく、現地で目を引く商品として手に取ってもらえるよう、従来の瓶とは異なる販売方法を考案しました。

このような、福島の酒蔵と海外の市場をつなぐ取り組みの根底には、福島で震災を経験したからこその思いがあります。「物を通して福島の復興に関わりたい」「福島の美味しい日本酒を知ってもらいたい」という気持ちが、事業を続ける原動力になっています。

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Q2. 大熊町で事業を始めたきっかけは?

私自身、震災当時は大熊町に住んでいて、子どもが小さい頃は大熊町で過ごしていました。そのため、大熊町は自分にとって思い入れのある場所でした。

新しい事業を始めるにあたっては、すでに別会社を経営していた郡山市を拠点にする選択肢もありました。
それでも、「浜通りの復興に関わる事業をやるなら、やはり浜通りに拠点を置きたい」という思いが強くありました。

そんな中で、大熊インキュベーションセンター(OIC)が開所することを知りました。当時は拠点探しに悩んでいた時期だったので、「これだ」と思い、かなり早い段階で入居を申し込みました。

自分にとって大切な場所でもある大熊町で、事業を通じて少しでも地域に関わり続けていけたらと思っています。

Q3. OICをどのように活用していますか?

主に2つの目的で活用させてもらっています。

ひとつは、弊社の「酒類販売免許の登録拠点」としての活用です。
OICに会社の住所を置くことで、お酒の販売や海外輸出に欠かせないライセンスを取得・維持するための大切なベースキャンプにしています。

もうひとつは、「大熊町とのつながりを保つ拠点、そして情報交換の場」としての活用です。
OICに足を運ぶのは月に1〜2回ほどで、訪れた際の時間をとても大切にしています。

大熊町に来たときは、町内に新しくオープンした飲食店を巡って「今はどんな状態に変化しているのかな」と自分の目で見て現状を確かめたり、OICにいる若い人たちとコミュニケーションを取って「美味しいお店を教えて」と情報交換をしたり。
地域や人と繋がる場として、OICを心地よく活用させてもらっています。

Q4. 普段はどんな生活をしていますか?

最近の習慣は、毎朝メイクをしながら「聴く日経」などを聴いて情報収集をすることです。海外輸出に関わっているので、世界情勢は常に気になります。
ニュースを聴きながら、「これから価値を持つものは何だろう」「今は使われなくなったものが、将来ビジネスになるかもしれない」など、いろいろなことを考えています。

自社の仕事がほとんどですが、それ以外では地域活動にも力を入れています。郡山市ではロータリークラブの幹事を務めているほか、女性だけのNPO法人も立ち上げました。

そのNPOには30〜40代の女性経営者が参加しており、女性や子どもが安心して暮らせるための環境づくりに取り組んでいます。たとえば、郡山市内で、女性に必要な衛生用品を無償で設置する活動をしています。

一方で、なるべく何も考えない時間もつくるようにしています。映画を見たりして、頭をリセットする時間も大切にしています。

Q5. 今チャレンジしたいことは?

たくさんあります。

まずは、福島の日本酒をもっと海外へ広めていきたいです。日本酒をきっかけに、福島県そのものにも関心を持ってもらえるような発信をしていきたいと考えています。

海外とのコミュニケーションを広げていくために、英語力ももっと磨きたいです。

最近は、地球温暖化によって酒米の産地が変わる可能性にも注目しています。これまで当たり前だったことが変わっていく中で、東北の価値が高まる場面も増えるかもしれません。
そうした時代の変化を見ながら、新しい提案をしていきたいです。

また、NPOの活動にも引き続き取り組んでいきたいです。
仕事だけではなく、一人の人間として、地域の人たちの暮らしに少しでも役立てることを続けていきたいですね。

Q6. おすすめしたいものはありますか?

今とても楽しみにしているのが、浪江町の鈴木酒造さんが手がける楢葉町の柚子を使ったお酒です。
楢葉町の柚子と日本酒の相性がとても良いんです。現在、台湾向けの輸出準備を進めています。

ちなみに、日本酒の仕事をしていますが、実は私はお酒をまったく飲めません(笑)。
ただ、日本酒スペシャリストの資格は取得していて、知識として学んでいます。自分がお酒を飲めないからこそ、味の好みだけに頼らず、料理との組み合わせや飲む場面に合わせて提案することを大切にしています。

それから、自社で考案した『I am Sake』凍らせる梅酒もおすすめです。輸出しやすいパウチ型のパッケージになっており、海外の方にも興味を持っていただきやすい商品だと自負しています。

Q7. あなたにとって福島、大熊町とは?

私にとって福島や大熊町は、「宝の山」です。
福島には、美味しいお酒、水、空気、人など、本当にたくさんの魅力があります。まだ十分に価値として気づかれていないものも多いと感じています。
だからこそ、「諦めてはいけないし、手放してはいけない」と思っています。

震災は、もちろん大変な経験でした。しかし、過去に起きてしまったことを変えることはできません。

その中で「これからどう生きるか」「どう進んでいくか」は、自分たちで決められることであり、大切なことだと思っています。
だからこそ、ネガティブになりすぎず、前向きに進んでいくことが大事です。

周りの人の協力を得るためにも、自分自身が前向きでいることってすごく大切なんですよね。とはいえ、私が偉そうに言えることではなくて(笑)。

今の大熊町には、新しいことに挑戦している人がたくさんいます。
皆さんが前を向いて進んでいると感じていますし、私自身もその一員として、これからも大熊町に関わり続けていきたいです。

〜編集後記〜
福島の日本酒を世界へ届ける事業を通して、地域の魅力や可能性を発信し続ける渡邊さん。
その根底には、「復興」という言葉だけでは表しきれない、大熊町や福島への深い愛着がありました。
インタビュー中は終始明るく、軽やかにお話されていたのが印象的でしたが、その言葉の一つひとつから、地域や人へのまっすぐな思いが伝わってきました。
これから、りんくす合同会社がどんな“つながり”を世界へ広げていくのか、とても楽しみです。

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