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入居企業インタビュー#65 アルファ電子株式会社 さん

今回の入居企業インタビューでは、アルファ電子株式会社の代表取締役社長・樽川千香子さんにお話を伺いました。
医療・電子機器分野で培った高い品質管理技術を活かし、震災をきっかけに食品事業へ挑戦しているアルファ電子株式会社。現在は、福島県産米を使った米粉麺「う米めん」をはじめ、食や農業の分野にも取り組みを広げています。

Q1. 主な事業内容を教えてください

アルファ電子では、大きく分けて「医療・電子機器関連事業」と「食品・農業事業」の2つを柱として事業を展開しています。

医療・電子機器関連では、祖父の代から50年以上続く「組み立て・製造事業」を行っています。現在も会社全体の約9割を占める主力事業で、内視鏡関連部品やレントゲン操作ボード、コネクター関連、半導体関連の洗浄など、さまざまな精密機器の製造に携わっています。

2019年頃からは、新たに食品事業もスタートしました。現在は、福島県産米を使用した米粉麺「う米めん」や、米粉そのものの製造・販売を行っています。本社工場から車で15分ほど離れた創業の地の須賀川工場を食品専用工場に改装し、自社で製造しています。

私たちがものづくりで大切にしているのは、「根拠に基づいた品質管理」です。医療・電子機器分野では、少しのミスも許されない世界だからこそ、「なぜ安全と言えるのか」「なぜ品質に問題がないのか」を、感覚ではなくデータや数値で説明できることを重視してきました。

その考え方は食品事業にも活かしています。食品安全マネジメントシステムの国際規格 「ISO 22000」の取得に加え、「う米めん」のもちもち感やコシについても、大学と連携しながら約2年半かけて研究を行い、“おいしさ”にもきちんと根拠を持たせることを大切にしています。

また、最近では、きくらげの菌床生産など、農業分野への取り組みも少しずつ広げています。

Q2. なぜ、食品事業を始めようと思いましたか?

きっかけは、東日本大震災でした。

震災を経験したことで、これまでの事業のあり方を改めて見つめ直す機会になりました。社会や取引環境が大きく変化する中でも、企業として継続的に価値を届けていくためには、自分たちで考え、開発し、届けていく事業も必要だと感じるようになったんです。

当初は、これまで携わってきた医療・電子分野での新規事業も模索していましたが、設備や資金面でのハードルが高く、なかなか形にすることができませんでした。

そんな中、避難先だった新潟で出会ったのが「米粉」でした。

米粉について学んでいく中で、日本のお米の消費量低下や耕作放棄地の増加といった社会課題を知りました。福島県産米を活用することで、地域の農業復興、又は農業活性にもつながる事業にできるのではないか。そう考えたことが、食品事業に取り組む大きなきっかけになりました。

Q3. 食品事業を始めて、大変だったことはなんですか?

一番大変だったのは、「おいしさ」と「安全性」の両立です。

子どもでも安心して食べられる無添加の麺を目指しながら、“もちもち感”や“コシ”にもこだわりました。ただ、「なんとなくおいしい」ではなく、きちんと数値的な根拠を持って説明できる商品にしたかったため、大学とも連携しながら約2年半かけて研究開発を行いました。

ちょうどコロナ禍とも重なっていて、お家需要もあり「早く販売したい」という焦りもありました。それでも、まずはしっかり良いものを作ることを大切にしていました。

食品工場の立ち上げにあたっては、「ISO 22000」の取得にも取り組みました。新しい認証取得では、社員の理解や意識づくりが課題になることも多いのですが、アルファ電子では、これまで医療・電子分野で培ってきた“根拠に基づくものづくり”の文化が社内に根付いていました。

先代や社員たちが積み重ねてきた経験のおかげで、食品事業でもその考え方を自然に活かすことができたと感じています。

Q4. OICに入居したきっかけや活用方法を教えてください

きっかけは、OICが立ち上がるタイミングで、「電子・医療機器」の分野で何かお手伝いできることがあるのではないかと思ったことです。

また、新しく始めた「食・農業」の分野でも、新たなつながりをつくっていきたいと考えていました。

米を使った事業に関わる中で、「福島の復興に向けて、企業として何ができるだろう」と考えることが多くありました。福島国際研究教育機構(F-REI) や福島イノベーション・コースト構想など、浜通りで新しい動きが生まれている中で、自社としても復興に向けた取り組みに関わっていきたいという思いがありました。

現在は、イベント出展や交流を通じたつながりづくりを中心にOICを活用しています。

毎年3月に開催されるおおくま学園祭への出展は、「う米めん」を多くの方に知っていただく機会にもなっています。実際に、大熊町内の商業施設「クマSUNテラス」内の飲食店で「う米めん」をメニューとして使っていただくなど、具体的な連携も少しずつ生まれています。

また、OIC主催の「食と農業」に関するオンラインイベントへ参加したことをきっかけに、浪江町の米農家さんとのつながりも深まりました。現在では、浪江町産のお米を「う米めん」の原料として仕入れるなど、実際の事業連携にも発展しています。

さらに、昨年のランチ交流会では、「う米めん」を冷麺としてご提供いただきました。米粉のラザニアシートも開発していますので、今後もOICでの交流を通じて、食や農業に関する新しい連携を広げていけたら嬉しいです。

Q5. 普段はどんな生活をしていますか?

長年、仕事と子育てを両立する生活を送ってきました。

震災当時、娘はまだ生後3か月で、新潟へ3年間避難していました。その後、福島県へ戻り、2015年にアルファ電子へ入社しました。2018年頃からは専務として事業承継の準備を進め、2023年に社長へ就任しました。

会社へ入社してからは、仕事と子育てで本当に慌ただしい毎日でした。現在、娘は高校1年生になり、少し子育ても落ち着いてきたので、今は仕事中心の生活になっています。

Q6. 今チャレンジしたいことは?

今後は、仕事を通じて海外にも足を運ぶような働き方にも挑戦してみたいです。

現在、「う米めん」は、オーストラリア、ドイツ、フランス、イスラエルなど、海外への輸出も増えてきています。特にフランスでは、グルテンフリー需要や“もちもち食感”が評価され、レストラン向けに大きな注文をいただくこともあります。

ただ、実際に現地でどのように調理され、食べられているのかは、まだ見に行けていないんです。

今後は海外へ足を運び、自分たちの商品がどのように受け入れられているのかを実際に見てみたいですね。直近では、フランスで開催される展示会への出展も目指しています。

Q7. あなたにとって福島県とは?

福島県は、私にとって「恩返しをしたい場所」です。

震災を経験したことで、「福島で生きていく意味」を改めて考えるようになりました。自分を育ててくれた環境や人たちへの感謝が強くあり、これからは自分が恩返しをしていく立場なんだと思っています。

だからこそ、福島県産のお米など、地域の農産物を積極的に使うことで、事業そのものが少しでも福島への恩返しにつながればと思っています。

Q7. 大熊町民の皆さんに伝えたいことは?

大熊町は、外から見てもとても可能性のある町だと感じています。

これまで大変な経験もたくさんあったと思いますが、それを少しずつ前向きな力へ変えていこうとしている町の空気を感じていますし、私自身もその一員として頑張っていきたいと思っています。

町内には、新しく挑戦する人やお店も増えてきています。アルファ電子としても、「食」や「農業」の分野で、大熊町の皆さんと一緒に何か新しい取り組みができたら嬉しいです。

〜編集後記〜
震災をきっかけに、「自分たちで開発し、自分たちで届ける事業」を立ち上げたアルファ電子。医療・電子機器と食品は一見異なる分野ですが、お話を伺う中で、その根底には同じ“ものづくり”への姿勢があるのだと感じました。
医療・電子機器分野で大切にしてきた「根拠に基づくものづくり」は、「う米めん」の安全性やおいしさにも活かされています。福島県産米を使った商品が、地域の中で、そして海外へも少しずつ広がっていることに、これからの可能性を感じました。

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