入居企業インタビュー#46 有限会社大成住設
今回の入居企業インタビューは、大熊町で「コミュニティキッチン090」を運営する有限会社大成住設にて、大熊町のお土産開発を行う吉田幸恵さんと、復興支援員として同社で働く佐々田亨さんにお話を伺いました。
Q1. 主な事業内容を教えてください
吉田さん:
大成住設は、いわき市や双葉郡を拠点に、建設を中心とした幅広い仕事を手がけている会社です。その事業の一つとして、大熊町で「コミュニティキッチン090」を運営しており、私はそこで主にお土産品として販売するお菓子づくりの開発を担当しています。クッキーとマドレーヌからスタートし、現在ではスコーンなど新しい種類も増やしているところです。
お菓子の特徴は、一社)おおくままちづくり公社さんが手掛けている日本酒「帰忘郷」に使われている酒米「五百万石」を米粉にして使っていることです。日本酒、甘酒に続いてお菓子が「帰忘郷」に仲間入りしました。
米粉のお菓子は珍しくありませんが、酒米を使う例はほとんどなく、県内でも数が限られています。酒米は水分が少なく、炊くとパラパラとした食感になり、通常の料理にも向かないほど扱いが難しい素材です。お菓子に仕上げるまでには配合を何度も調整する必要があり、最初の頃は試作をしてもうまく形にならない日が続きました。
もともと家族が小麦アレルギーだったことから米粉のお菓子はよく作っていましたが、酒米は全く別物でした。感覚が一切通用せず、何度も失敗しながら、ようやく「ほろっと崩れるクッキー」や「しっとりしたマドレーヌ」の形にたどり着くことができました。
また、保存料や着色料は使わず、砂糖はきび糖を使用しています。小さな子どもからご年配の方まで食べやすく、どこか懐かしい味わいになるよう工夫しています。
最近は季節限定品やイベント限定のお菓子にも挑戦していて、昨年の「おおくま学園祭」に出した酒米のガトーショコラは、13時過ぎにはすべて売り切れました。あの日を境にニューヤマザキデイリーストアでの販売数が一気に伸び、直接お客さんと話しながらお菓子を手に取っていただけたのが、とても励みになりました。

Q2. 今後はどのようなことを目標にしていますか?
吉田さん:
一番の目標は、「道の駅に090のお菓子を並べること」です。
「大熊町のお土産といえば090のお菓子だよね」と言っていただけるように、復興支援員の佐々田さんと一緒に、作り方や売り方、ブランドの伝え方まで細かく見直しながら進めています。
佐々田さん:
「イメージを崩さない売り方をする」というのは、大事にしているポイントの一つです。どこでも販売するのではなく、どういう意図でそこで販売するのか、誰に食べてもらいたいのかを考えるようにしています。
吉田さん:
まずは地元でしっかり知っていただくことが大切だと考え、町内全戸へのポスティングを行ったり、町内のお祭りに出店したりと、少しずつ活動の幅を広げています。
お客さんが来たときにお茶請けとして楽しんでいただいたり、帰省の際の手土産として持っていってもらえたりするように、クッキーの形にも工夫を凝らしています。また、どんな方でも安心して食べられるよう、体にやさしい材料を使っています。
地域の皆さんに喜んでいただきながら、一歩ずつ、確実に積み重ねていくことを大切にしています。
Q3. OICに入居したきっかけと活用方法について教えてください
吉田さん:
コミュニティキッチン090には事務作業をする場所がなく、どうしても家に持ち帰って仕事をすることが増えていました。これでは長く続けられないと感じたためOICに登録し、事務室として使っています。
OICは人の出入りが多く、自然といろいろな情報が入ってきます。交流スペースにいると、誰かしらが声をかけてくれたり、試作品を食べてもらえたり、感想をいただいたりします。こうしたやりとりがとても励みになりますし、試作品づくりにも役立っています。

Q4. 普段はどんな生活をしていますか?
吉田さん:
漫画が好きで、自宅には“漫画部屋”があります。ただし、椅子を置くとこもりきりになってしまうので、あえて置かないようにしています。「怪獣8号」「銀魂」「ほおずきの冷徹」「ちはやふる」など、しっかりストーリーがあるものが好きです。あとはイラストレーターの高田明美先生が大好きですね。
佐々田さんも漫画やイラストが好きなので、仕事の合間にそんな話をすることも多く、良い気分転換になっています。
佐々田さん:
家族との時間が中心です。最近、子どもが自転車に乗れるようになり、一緒に練習する時間がとても楽しくなっています。
Q5. おすすめしたい○○を教えてください
吉田さん:
やはりまずは、「090のお菓子」をおすすめしたいです。
クッキー、マドレーヌ、スコーン、イベント限定のガトーショコラはどれも好評をいただいています。カエルの形をした抹茶味のクッキーは、川内村からオファーをいただいたこともあります。
お菓子を通して、双葉郡全体が少しでも盛り上がるきっかけになれたらと考えています。震災前、私たちの生活圏は自然に町をまたいで広がっていました。買い物や食事をするなら富岡町、子どもを遊ばせたり飲みに行くのは浪江町、図書館は大熊町、夜ノ森での花見、天神岬の温泉……。大熊町だけで完結していたというより、双葉郡全体で暮らしていた感覚があります。
だからこそ、お菓子づくりを通して、この地域が再び一体感を取り戻すきっかけになれば嬉しいです。

大熊町のおすすめの場所としては、今はまだ入れませんが「三ッ森山のあじさい」があります。昔はそこで長さ200mの流しそうめんを行っていました。また、小塚の山桜もとても綺麗ですし、少し道を行くとある「玉の湯温泉」は、とても良いお湯でした。
Q6. 今チャレンジしたいことはありますか?
吉田さん:
まずはお菓子を軌道に乗せること。いまはそのことだけを考えています。
佐々田さん:
そうですね。まずはお菓子開発・販売に注力したいです。また、以前に自営業で陶芸をしていたので、クッキーと陶芸を掛け合わせたワークショップができたらなと思っています。
Q7. あなたにとっての福島、大熊町
吉田さん:
ふるさとです。
大熊だけでなく双葉郡という地域が自分を肯定できる場所。たくさんの思い出がありますし、震災後も多くの人に助けられてきました。少しでも恩返ししたいという気持ちで暮らしています。
そして、「いつか家族全員で『ただいま』と大熊に帰りたい」
その気持ちがずっと心の中にあります。
自宅がある場所は未だ帰還困難区域ですが、亡き祖父が開拓したあの場所で、いつかお店ができたら。
やがてそのお店が、自分や家族のふるさとになったらいいなと。それが私の願いです。
◆編集担当より
酒米という難しい素材に真正面から挑み、試行錯誤を重ねて完成させたお菓子には、地元への強い思いが込められていました。090のお菓子は、ニューヤマザキデイリーストアー大熊町大川原店で購入できます!ぜひ手に取ってみてください。