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入居企業インタビュー#14 OKUMA DRONE株式会社 李 顕一さん

OKUMA DRONE株式会社
李 顕一さん

カリフォルニア州立工科大学卒。2017年より楽天ドローン事業部にて技術企画を担当し、福島県南相馬市およびローソンと共同で商品配送実証実験に従事。2022年1月にOKUMA DRONEを設立。

Q1. 主な事業内容について教えてください。

弊社ではドローンを軸に複数の事業を手がけており、主力となるのは2つです。

1つは「水素燃料ドローンの開発」です。

液体水素を燃料とする電池で飛ぶドローンなのですが、一般的なリチウムイオン電池で飛行するドローンよりも航続時間を5倍~6倍に伸ばすことができ、大きく期待されている開発分野です。

もう1つは「ドローンの運行管理システムの開発」です。

ドローンが社会で実装されるにはレベル1から4までの段階を踏んでいくのですが、レベル4では操縦士から見えないほど遠い範囲でも自動飛行が可能で、人が常にいるような都市部での物資輸送や災害時の捜索・救助に活用できると考えられています。

政府は、ドローンのレベル4飛行を段階的に実現し、2025年以降には指定区域内でドローンや航空機、空飛ぶクルマの運用を実現することを目指していますが、これを実現するためにはドローンの動きをきちんと管理できるシステムによって接触や衝突を避けることが重要です。

メイン事業は上記2つですが、他にも様々なプロジェクトを行っています。

例えば種子散布機の開発です。これは弊社で開発する運行管理システムを使用して、ドローンで農地などへの種まきを自動で行うものです。

地盤が緩かったり、後処理が困難だったりと緑地化が必要であるがコストが高く危険も伴う土砂災害の発生地などが主な対象で、こうした場所にドローンを使用することでコストもリスクも比較的低く抑えることができるため、開発を進めています。

次に、国内外でまだ認証されたものがないため、開発に成功すれば世界初となる「防爆ドローン」の開発にも力を入れています。

特に石油化学プラントなどの爆発リスクが高い場所での使用ニーズが増えていますが、電子機器の持ち込みが制限されるため、火花を発生させない防爆仕様のドローンの開発が必要で、補助金を活用しながら開発を進めている段階です。

さらに、大熊町では、2024年2月14日から16日、帰還困難区域内で3Dマッピング測量実験を実施しました。通常、帰還困難区域では人が一軒一軒見て回って建物の大きさや広さを測定することで1平米あたりの除染にかかる費用の見積りを行っています。

しかし、この方法では作業に時間を要し、作業員の被ばくリスクがあるという課題がありました。弊社は、同時運行・遠隔操作が可能な運行管理システムとドローンを開発し、測量に役立てることで効率的で安全な測量作業を実現することを目指しています。

Q2. 事業を行う上での課題はどのようなところにありますか?

現状、水素ドローンに搭載する燃料電池は海外製が多く、弊社でも主にイギリスの会社のものを搭載していますが、耐久性や使い勝手があまり良くありません。

そのため、将来的には国内で耐久性も信頼性も高い燃料電池を開発する必要があると思っています。現在、日本国内で燃料電池を作るメーカーと連携し、純国産の水素燃料電池の開発を計画しているところです。

また、水素を供給できる拠点が近くにないというのも大きな課題ですね。

現在、車用の水素ステーションであれば至る所にありますが、他の用途では水素を供給することができないため、弊社の水素ドローンに水素を供給するには、タンクを業者に送り、工業用の水素を充填してもらわないといけません。このやり取りには一週間を要し、時間的にも費用的にもコストが高くなっています。

解決方法は多くありますが、やはり水素を作れる工場を建設するのが良いと考えているので、先述の水素燃料電池を作るメーカーなどとの連携を考えています。

Q3. OICをどのように活用していますか?

OICは開発拠点というよりも事務作業を行う場所として利用しています。特に実用化補助金を申請するにあたり多くの書類が必要になるのですが、印刷や事務局への提出などをサポートして頂けるので、非常に助けていただいています。

また、最近、日本自動車研究所(JARI)さんや福島周辺の企業さんとやり取りする場面があるのですが、OICに行ったことはないけれど興味を持っている、という方は多いですね。
「じゃあ一度見るついでに打ち合わせをOICでやりませんか」という流れで、打ち合わせの場所としてもよく活用しています。

来て頂いた方々には「本当に小学校の跡地をうまくリノベして有効活用して、新旧入り混じっていて、非常に魅力的な施設だね」というコメントをよくいただきます。あとは、勉強会や忘年会など、集まって何かする場所として魅力的だねとも言って頂いています。仮眠室もスタートアップにとってはありがたいです。

また、OICの特徴として、いらっしゃる方々がスタートアップの方が多いからか、仲間意識を感じると言いますか、他人の感じがしない、良い雰囲気がありますね。

弊社では東京にもシェアオフィスを借りているのですが、挨拶をする機会は少ないです。一方、OICでは入居企業同士のつながりが生まれていて、(株)AIBODさんとイノベ機構のFTCプログラムからお付き合いさせていただいていたり、オーシャン(株)さんとは東京でお会いしたり、いつもFacebookでやりとりさせていただいたりしています。それ以外の企業さんとも、OICで出会えたり、お付き合いできたりするのはとてもありがたいです。

Q4. 普段の生活について教えてください。

普段は東京で活動することが多いですが、特に働く場所の縛りはありません。

なのでほとんどのメンバーは月曜日の朝10時に集まって一週間の流れやタスクを確認したら、あとは各々の家で活動したり、営業先にいったり、作業場に行ったりと、基本的には各自で作業しています。

Q5. おすすめしたい〇〇を教えてください。

ロードバイクです。最近は行けていないですが遠くに走りに行くのが趣味です。息抜きにもなりますし、体力もつくのでおすすめです。

ロードバイクの良いところは座ったまま足をくるくる回していれば、100キロ200キロ走れてしまうところです。

徒歩でそのような距離を移動するのは大変ですし、自重を自分で支えるので膝とか腰を悪くしてしまう可能性もあります。

一方、自転車はカロリーも消費しやすく、結構ハードに漕いだときは1日で4000カロリーくらい消費します。レベルに応じて負荷をあげていくと健康にも繋がりますし、行った先でカフェやレストランにいく楽しみ方もできます。

どこかの山の紅葉を見にいくときも徒歩の場合は電車や車を使用しなければならないことが多いですが、自転車なら運動しつつ景色を楽しんで、ついでに美味しいものを食べてというように丸一日楽しめるので、最高の息抜きであり、遊び方であると思います。

Q6. 今チャレンジしたいことを教えてください。

仕事の観点で言えば、サステナブルなビジネスを実現していくことです。

ディープテック領域のスタートアップはどうしても収入に対して支出が高くなり、最終的に資金がショートしてしまうことが多いと言われています。そうならないように、開発フェーズではありますがどう事業化できるかは常に考えています。

ドローン業界はちゃんと利益を出すことができている会社が少ないとよく聞きます。IPOも1つの方法ですし、どこかの大きな企業にM&Aするのもそうですし、最適な形を選んでドローン事業でしっかりと売り上げを立てて利益を出していく。その上で、従業員を雇って社会に貢献できるような、そういう会社にしていきます。

Q7. 関心のある事、分野をおしえてください。

弊社には海外に強いメンバーが多いので、海外市場には非常に興味があります。
既に、マレーシアやフィリピンなど東南アジアでの市場調査に取り組んでいます。

例えば広大なファーム農園が多いフィリピンで種子散布ドローンや航続時間の長い水素ドローンによる管理マネジメントに需要がないか探ったり、山火事が頻発する箇所などで火消しドローンみたいなものの需要がないか調査したりしています。

現在フィリピンやマレーシアに中国系のドローン企業が進出していますが、彼らのドローンはユースケースが空撮などに絞られていて、大型のドローンは作りません。
そのため、弊社は種子散布や物流に必要な大型ドローンの分野を攻めていきたいですね。

Q8. あなたにとっての福島県、大熊町とは?

初めて福島に関わったのは、7年ほど前に豊田自動織機から楽天ドローン事業部に移ったときです。南相馬市のローソンと連携して、ドローンでからあげクンを届ける実証実験に参画しました。

そこからずっと福島を見ていて、南相馬のロボットテストフィールドなど、復興が進んでいるのを感じます。このタイミングで福島で事業をさせて頂く以上、やはり最後まで福島の復興を見守っていきたいです。

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