入居企業インタビュー#05 NPO法人インビジブル 林曉甫さん
NPO法人インビジブル
理事長/マネージングディレクター 林 曉甫
2015年にNPO法人インビジブルを設立。同法人の仕事で富岡町を訪れる中で実現したいことが生まれ、2020年に移住。富岡町を中心に東京と2拠点生活を送る。
Q1. 事業内容や活動内容について教えてください。
「アートを触媒に見えないものを可視化する」をコンセプトに、地域活性や教育・メンタルヘルス等の領域の事業を都内各所で展開しています。
福島県富岡町では、富岡町の小・中学校で毎年、1人または1組のプロフェッショナルを派遣する【プロフェッショナルインスクール(PinSプロジェクト)】というプロジェクトを実施しています。
このプロジェクトでは、アーティスト、建築家、音楽家など、クリエイティブな事業を展開する方々をお招きし、毎月学校に通っていただき、学生たちと活動を行っています。今後、大熊町など近隣地域でも実現できればと考えています。
また、被災者の方へのメンタルヘルスとして、アートを介して1人1人が意志や考えを他者と共有できるような場も作っていきたいです。
Q2. OICをどのように活用していますか?
仕事場として活用しています。仕事中は人の出入りが少ない有料エリアの方のコワーキングスペースをよく利用しています。
また、オンラインも含め何人かでミーティングを行うときは音を出した状態で話せるのでweb会議室も頻繁に使用しています。
インターネットが速かったり、ミーティング用の部屋があったりとオンラインでの仕事にも集中できる環境がきちんと備わっているのでありがたいです。
交流スペースなどは、色々な人が出たり入ったりしていて色々と新しい出会いがある反面、気づかぬうちに仕事に集中できないこともあったりするので、静かな所で仕事をして、交流スペースにコーヒーを飲みに行って皆さんとお話して、という使い分けができるのがとても良いなと感じています。
お昼に20分程寝ると午後のエネルギーが爆上がりするので仮眠室もおすすめです。桜が咲いてる時期は特に、眺めも最高です。
Q3. 普段はどのような生活をしていますか?
富岡町に住みつつ、東京と富岡町を仕事の日程に合わせ行き来しています。大体2~3週間くらいが富岡、1週間~1週間半が東京という形ですね。
富岡にいるときは6時半くらいに起床し、朝食作ったり準備したりして、OICに9時くらいに行きます。
仕事中はオンラインの会議したり、デスクワークしたり、現場が富岡や葛尾村にあるのでそこに行ってという感じです。
大体7時半ぐらいに仕事に一区切りをつけてlinkるおおくまのジムに行って、戻ってきてOICで食事をつくり、仕事に戻るという生活をしています。
Q4. おすすめしたい○○を教えてください。
個人的に行っている『ランニングと朝食』という活動です。
2016年に活動を立ち上げたのですが、当時は今のように毎日ジムに行くという習慣がなかったので、運動不足を感じていて。
でもなかなか1人で続けるって難しいなと思い、近くの人に朝ごはんに行きませんかって誘ったことから始まり、そうこうしているうちに今はメンバーが世界各地にいて、1500名くらいになりました。
自分たちがやりたい!と言えば立ち上げられるような緩いチームですが、やっぱり日常の中にささやかな運動をいれたりとか運動しなくても人と朝ごはんを食べるみたいな時間は、その日の生活の満足だったり楽しみだったり新しい興味関心が開かれていくというのを自分自身がこの活動を通して学びました。
基本はFacebookグループで活動しており、いろんなところに友人ができたり、一緒に走るという関係ができたりするのが良いなと思っています。
※『ランニングと朝食』の詳細はこちら▼
Q5. 好きな本はなんですか?
いくつかありますが、ブルースチャトウィンという方が書いた『パタゴニア』という本がすごく好きです。
コロナ禍のときだとか、なかなか旅行ができなかったりするときに、作者の紀行に想いを重ね没頭できる一冊です。大学生のときに読んで、すごく影響を受けました。
もう一冊は『単一民族神話の起源―「日本人」の自画像の系譜』という本です。
僕の父親が元々台湾出身で、若くして沖縄の方に家族で移住してそれから日本で暮らしている人で。
高校生でメキシコに住んでいた時に、自分が果たして日本人なのかどうなのか、すごく悩んだ期間がありました。
その高校時代にメキシコ流が鵜を経て、入学した大学のサークルの活動の中で一番最初に書評をしたのがこの本だったんです。
そもそも日本というのは単一民族ではないんだよっていうところから、それについて議論の論証をしていって。
これだけ世界が多様になってきている中で、自分たちの民族が何かということを考える機会は1人1人が増えてくると思いますが、実際に入管法(日本に出入国する者の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続を整備することを目的とした法律)の話や難民受け入れの話などがある中で、今でもまだまだ多くの人が日本は単一民族だということを信じている方が多いと思います。
そうでなくて、もっと開かれたものであるんだということを自覚するということが大事なことだと思っています。
僕の人生ですごく大事な本ですし、ぜひ読んでもらえたらと思います。
Q6. 今チャレンジしたいことを教えてください。
富岡町に引っ越し、本格的に活動し始めて2年になりますが、今後は自分たちのプロジェクトの拠点づくりをしたいと思っています。
同時に、今年度から富岡町の移住定住プログラムを富岡町の方々と一緒に行うことになったので、これからPinSプロジェクト以外でも、クリエイターの方々とか、高校生のインターンシップ生や大学生のアルバイトとか、東京の方で仕事に関わってもらっている人たちにも、こっちに来てもらうような機会を作りたいです。
自分のもう一つの場所として浜通りを認識してもらえたらいいなと思っています。
Q7. 林さんにとっての福島・大熊町とは?
福島とか大熊という言葉でくくって語るほどこの土地の固有生を理解できていないため、福島=、大熊=○○という風に話すのはすごく難しいですが、大変な事はあったりしたものの、本当に新しい可能性が芽吹き始める場所になってほしいし、それが芽吹く場所にしていきたいと、1人の生活者としての想いがあります。
移り住んだ身として、生活者として、この場所がより開かれて、より楽しいことが生まれていく場所にしたい。その一方で、過去から今に至る歴史や風土を引き継ぎながら発信していくということも重要だと思っています。
自分たちの手でもう一度回復させていく、次の可能性を探究し、作り上げていく場所ですね。
◆編集担当より
いかがでしたか。
今回は、仕事、筋トレ、ケトジェニックダイエットなど、何事にもストイックに取り組む林さんのインタビューでした。
林さんは浜通り地域において、PinSプロジェクト以外にも様々な活動をされています。先日富岡町で行われた、自分の想いを時間設定に込める「時の海-東北」プロジェクトのタイム設定ワークショップには私も参加させていただき、新たな刺激を得ることができました。
イベント情報はOICのHPやSNSでも発信していきますので、ぜひ皆さんも参加してみてください。