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入居企業インタビュー#26 株式会社Kukulcan さん

今回のインタビューでは、株式会社Kukulcanの代表を務めるホンリナさんにお話を伺いました。活動内容や、なぜ大熊町で活動しているのかなどぜひご覧ください!

Q1. 主な事業内容、活動内容について教えてください

Kukulcanは、「畑のフードロス」の解決を目指す企業です。

現在、見た目が規格に合わないだけで流通できない農作物や、天候の影響で一度に大量に収穫されてしまい、売り先がなく廃棄されてしまう農作物が数多く存在します。実際、日本では毎年およそ200万トンもの“食べられる”野菜が廃棄されています。これは単なる「もったいない」だけでなく、廃棄処理にコストがかかり、CO₂排出の原因にもなっています。

この課題の解決に向けて、私たちはいくつかの技術・サービスを開発しています。

まず、収穫量予測AI の開発です。農作物の収穫量は、病害虫や天候の影響を受けやすく、実際に収穫するまで市場に出せる量がわからないことが多いのが現状です。しかし、ある程度の「できすぎ」が予測 できれば、事前に販売先を確保したり、野菜を使ったイベントを企画したりと、対策を講じることができると考えました。

一方で、農家さんにこのような収穫量を予測するAI技術を使っていただくためには、より多くのメリットを提供する必要があると考えています。そのために、1年を通して直面する農家さんの様々な課題を解決するサービス、特に、経験年数の浅い若手農家さんの成長を支援するサービスとして開発を行っています。現在も、農家さんのニーズ調査を継続しながら、サービスの開発を進めています。

さらに、すでに収穫された規格外品やロス品については、農家直販の専用プラットフォームを開発中です。Kukulcanが農家さんから情報を集め、見た目は少し劣っても味は確かな野菜や果物を、必要なタイミングで定期便として消費者にお届けする仕組みです。

現在は、京都の九条ネギの農家さんや、大熊町のネクサスファームおおくまさんにもご協力いただき、廃棄予定だった野菜をアプリ開発の一環として活用し、周囲の方々へ配布するなどの取り組みを進めながら、消費者側のニーズを調査しています。

OICにてKukulcan提供の九条ネギを使用したランチ交流会も開催しました

たとえばあるとき、ある芸能人の方が主催したクラブイベントに参加し、その場で九条ネギを配るというちょっと変わった試みを行いました。
慣れない空間でそわそわしましたが、気づけば会場のあちこちでネギを手にしている方が見られました。

これは、「どうしたら多くの人にフードロスの問題を身近に感じてもらえるか」を模索する中での一つのチャレンジです。SNSなどを通じて「なんだこれ?」と関心を持っていただき、そこからフードロス削減に参加してもらえたら嬉しい。そう考えています。

私たちは、農家さんと消費者、双方のニーズを直接探りながら、得られた知見を将来的にはAIやテクノロジーに活かしていくことを目指しています。

Q2. 現在大熊町ではどのようなことに取り組んでいますか

現在、大熊町では、地域に根ざした農業技術やノウハウを学び、それをAIに学習させる取り組みを進めています。ネクサスファームおおくまさんには、その実証フィールドとしてご協力いただいており、現場での知見をもとにサービスの精度を高めています。

開発したサービスは、今後、株式会社ReFruitsの方々など、新規就農者、移住者の方々にも活用いただき、大熊町の農業の復興と持続的な発展に貢献したいと考えています。

具体的には、季節ごとの栽培作業や異常気象への対応などをAIがアドバイスし、収穫量の予測や出荷先の提案まで行える仕組みを構築中です。

こうした取り組みを加速させるきっかけとなったのが、株式会社tayo代表でありOICスタッフでもある熊谷さんとの出会いでした。そのご縁から、OICCC(OIC Cleantech Challenge)を知り、参加を通じてビジネスアイデアをブラッシュアップしたり、一緒に取り組む仲間をご紹介いただくなど、大きなサポートを得ることができました。

OICCCにてプレゼンを行うホンリナさん

また、その後は福島イノベ機構の支援事業「Fukushima Tech Create(FTC)」にも採択され、事業はさらに前進しています。
かつて大熊町は果物の生産が盛んな地域でしたが、避難の影響で農業は一時的に停滞してしまいました。今あらためて、その農業の可能性を再び地域とともに盛り上げていきたいと考えています。

Q3. 事業を進めるうえでの課題はありますか

事業を進めるうえでの課題はさまざまありますが、その一つが市場価格への影響です。「この取り組みが市場価格に影響したらどうするのか?」という声をいただくことも少なくありません。

確かに、市場価格の安定は重要です。しかし、その影響を懸念するあまり、対策も取らずにまだ食べられる野菜を捨ててしまうという現状は、あまりにももったいないことだと感じています。

日本では農業従事者が減少を続けており、高齢の農家さんが収穫しきれず畑に野菜を残してしまうケースも増えています。さらに、世界的にも将来的な食糧難への懸念が高まっているなか、こうしたフードロスは私たちが向き合うべき大きな課題です。

そこで私たちは、市場価格に悪影響を与えずに農作物を流通させる方法を模索しています。

JA(農業協同組合)など既存の流通機構とも連携を大切にしながら、業務用ルートへの展開や独自チャネルの確立などを通じて、フードロスの削減につなげていきたいと考えています。

Q4. 事業を始めたきっかけを教えてください

この事業を始めたきっかけは、主に2つあります。

1つ目は、韓国に住む家族が白菜や唐辛子を栽培し、粉末まで加工する個人農園を営んでいたことです。跡継ぎ不足や出荷先が見つからないといった悩みは常に付きまとい、個人農園の厳しい現実を身近に感じていたのです。

当初は「農業には関わらずに生きていこう」と思っていたはずが、気づけばいまの事業を選んでいましたね。

2つ目は、大学院での研究です。

博士後期課程では難民・外国人労働者について研究していく中で、仕事が得られず、日本に留まれない人々の姿を目の当たりにしました。この経験から、自らが事業を行うことでそうした人々を雇用し、少しでも貢献できればと思いました。

また、修士過程で専攻した文化人類学の影響もあります。自分と異なる文化圏、言語圏に行き、そこに住む方々の生きざまや価値観を言語化していく学問です。文化人類学を研究する過程で、消えゆく技術や記憶に対する愛着を感じるようになりました。農業でも同様に、担い手不足で失われつつある豊かな人々の文化や技術を守りたいという思いが強くなりました。

Q5. 普段はどのような生活をしていますか

東京や大阪など、様々な地域を行き来する生活を送っています。

食事に関しては特に果物が大好きで、果物中毒と言ってもいいくらいです。朝や昼はバナナだけで済ませる日も多く、気づけばカロリーの半分くらいを果物から摂取しているような状態ですね。

また、運動は毎日の習慣になっていて、クロスフィットやヨガを意識的に取り入れるようにしています。

チームのカレンダーにも「ヨガ」と予定を入れてしまうくらい、自分にとっては大事な時間です。忙しい日々のなかでも、体を動かすことで心と体のバランスを整えることを大切にしています。

Q6. おすすめの○○を教えてください

おすすめの場所として、私の“果物中毒”の原点でもある国、マレーシアをご紹介したいです。

実は、2年間ほどマレーシアに住んでいたことがあり、そのときに出会った南国フルーツの美味しさにすっかり魅了されました。パパイヤ、ジャックフルーツ、ドリアンなど、現地で味わえるフルーツはどれも新鮮で濃厚です。「果物ってこんなにおいしかったんだ!」と衝撃を受けた体験でした。それ以来、すっかり果物中毒になってしまいましたね。

さらに、マレーシアの暮らしや働き方にも大きな魅力があります。マレーシアは多様性に富んでいて、さまざまな文化的背景を持つ人々が自然に共存している社会です。その調和のなかで暮らしていた日々は、価値観を大きく広げてくれました。

文化的な多様性に触れたい方や、南国のフルーツを全力で楽しみたい方には、ぜひ一度訪れていただきたいです。

Q7. 今チャレンジしたいことはありますか

今の生活自体が、毎日チャレンジの連続です。

その中で私が大切にしているのは、知的好奇心を失わないこと。
「九条ネギの生産者ってどんな人なんだろう?」「どんなネギが育つんだろう?」と、日常の中に小さな問いを見つけ、何事にも“面白さ”を見出す姿勢を大切にしています。

でも、実は20代前半はかなり無気力でした。
大学では朝の1限に行けず、半年間お休みしたこともあります。卒業にも5年かかりました。その無気力な時期に、自分と向き合う時間がありました。
「自分は何をすればモチベーションが上がるのか」「何に関心が持てるのか」。当時は、他人の価値観や“なんとなく”で行動を決めてしまい、自分の本当の興味や強みに気づけていなかったんです。たとえば、「英語ができなきゃダメだから」と思い込んで、目的もなく勉強していたこともありました。

そこから、自分を徹底的に分析し直しました。
すると、社会の中で見えにくいものや、声なき声に光を当てたいという思いが、自分の中にあることに気づいたんです。
そうした対象に“愛”を感じたとき、私は自然と動けるし、力が湧いてくる。その感覚が、今の事業にもつながっています。

Q8. あなたにとっての福島、大熊町

私にとって大熊町は「はじまりの場所」です。ここでの活動を通じて、多くの人々や地域と出会い、自分の取り組みが形になっていく実感を得られました。

まだ道半ばではありますが、いつか「大熊町からすべてが始まりました」と胸を張って言える日を目指して、これからも一歩ずつ進んでいきたいと思っています。

この町で得た経験やつながりは、私にとっての原点であり、これから活動を広げていく上での大切な基盤でもあります。

これからも、大熊町とともに歩んでいけたらと思っています。

◆編集担当より
いかがでしたでしょうか。株式会社Kukulcanのホンリナさんへのインタビューを通じて、フードロス削減や若手農家支援、そしてAI技術の活用にかける想いを深く伺うことができました。大熊町という地での挑戦は、地域の農業復興と持続可能な未来を見据えた一歩でもあります。これからの活動にも、ぜひご注目ください。

 

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