入居企業インタビュー#43 一般社団法人Dream Forest Supporters 安倍雅昭さん
Q1. 主な事業内容を教えてください
Dream Forest Supporters は、子どもたちの自主性を育む学童保育や児童クラブの運営を中心に、不登校の子どもたちへの支援、通信制高校に通う生徒の受け入れ、発達支援や保護者への子育て相談、そして講演・研修などを通じた啓発活動など、地域と子どもをつなぐ多様な取り組みを行っている団体です。
私自身はもともと星槎グループの職員として、東日本大震災以降、被災地での子ども支援に携わってきました。その経験をもとにこの法人を立ち上げ、2023年度より福島県大熊町にて学童保育の運営を本格的にスタートさせました。
学童では子どもたちを「遊ばせる」のではなく、子どもたちが「今日は何をして遊ぼうかな」と自分で考えられる環境づくりを大切にしています。たとえば、最近では段ボールで「家」を作る遊びが流行しています。既製品のおもちゃに頼らずとも、身近な素材を使って自由な発想を形にする創造力をのびのびと発揮しています。
職員には、教員免許を持つ元教師や心理士、発達支援の専門家など、専門性の高いメンバーがそろっています。一人ひとりの個性に寄り添いながら、日々の遊びや会話を通じて子どもたちの小さな変化にも丁寧に目を向けています。また、学校とも連携し、保護者とも信頼関係を築きながら、家庭や学校の課題にもしっかり対応しています。
子どもたちは放課後だけでなく、朝や昼休みにふらっと立ち寄ることもあります。誰かに会いたくて来たり、ちょっと一息つきたくて来たり。そんな自然に集まれる場所になっていることが、何より嬉しいです。

また、地域との連携も大切にしています。駅前のイベントへの参加や、子どもたち自身が企画する「こども夏まつり」などを通じて、地域全体で子どもを育てる環境づくりに取り組んでいます。3月の「おおくま学園祭」では、授業や活動の中で子どもたちが制作した一点物の作品を販売しました。
学童以外の活動としては、既存の学校になじめなかった子どもたちを対象に、通信制高校に通う生徒の受け入れ支援も行っています。福島県大熊町でも一部受け入れを実施しており、学校という枠にとらわれず、よりアットホームな環境で学びを支える体制を整えています。
そして、発達障害や不登校についての理解を深めてもらうために、講演会や研修会の開催にも力を入れています。ゆめの森に関わる先生たちへの研修も行い、地域全体で子どもたちを支えていく風土を育てていけたらと思っています。
Q2. 今後の目標について教えてください
子どもたちがそれぞれに夢を持ち、いきいきと自分らしく過ごせる場所を、これからも広げていきたいと思っています。
私たちは、「自分にはできることがある」と思えるからこそ、「できないことは誰かに頼ってもいい」と素直に言えるのだと考えています。そのためには、まずその子の“得意”を見つけ、引き出し、認めることが大切です。得意なことに光が当たることで、自己肯定感が育ち、「自分の力を誰かのために使いたい」という気持ちが自然と芽生えてくる。そうした循環を作っていきたいと思っています。
星槎グループの考え方に「一人ひとりにえこひいきする」という言葉があります。全員に同じ支援をするのではなく、その子に合った関わりをすることの大切さを表しています。得意なことは活かし、苦手なことは周囲に頼る。そんな支え合いの感覚が、共に生きる社会の土台になるのだと思います。
また、「星槎(せいさ)」という文字にある「槎(いかだ)」には、太い木も細い木も、異なる素材を組み合わせることで、より強い“いかだ”になるという意味があります。障がいの有無、年齢、性別、国籍、宗教に関わらず、互いの違いを尊重し合える社会を目指したいです。
大熊町での活動にも、こうした考え方が根づいています。かつては「私立だからできるんでしょ」と言われることもありましたが、大熊町の教育に対する姿勢は、私たちのビジョンと重なる部分が多いと感じています。だからこそ、公教育ともしっかり連携しながら、地域からインクルーシブな学びを発信していきたい。そしてそれが、不登校の子どもを減らすことにもつながっていくと信じています。
この「ゆめの森」での取り組みが、やがて全国に広がっていくようなモデルになれば——そんな未来を描きながら、日々活動しています。
Q3. OICに入居したきっかけについて教えてください
きっかけは、先にOICに入居されていた方からのご紹介でした。
大熊町で活動を本格化させるにあたり、拠点となる場所を町内に持つことには大きな意味があると感じていました。地元で法人を設立し、納税することで、活動の基盤を地域に根づかせていく。そうすることで、私たちの取り組みがより地域の一部として息づいていくと考えています。
OICには、さまざまな背景や想いを持った人たちが集まっていて、学校だけでは得られない“第三の学び”の場のように感じています。ここでの出会いや情報共有を通じて、志の近い人たちと自然につながれる環境があるのも魅力の一つです。
また、枠にはまらないような、多様な人たちがいて、それぞれが自分のやり方で楽しみながら働いている姿が印象的です。そういう姿を近くで見られること自体も刺激になりますし、自分たちの活動にも良い影響を与えてくれています。
そういった意味でも、「ここで活動したい」と思って入居を決めました。
Q4. 普段はどんな生活をしていますか?
日々いろいろな地域を行き来しながら生活しています。
児童クラブの現場に立つのはもちろん、南相馬市では公立学校のスクールカウンセラーも務めていますし、神奈川県にある法人の仕事も兼ねています。さらに、学校教育のアドバイザーや卒業生のフォローアップなど、教育と心理に関わる仕事を中心に、さまざまな現場で人と向き合っています。
家に帰らず、ホテルに滞在することも多いですが、「不登校をなくしたい」「若い人たちの自殺をなくしたい」といった思いが、日々の活動を支える力になっています。
自己肯定感の低下は、他者との関係性のなかで生まれることが多くあります。孤立感を抱えている子どもたちには、リアルなつながりや信頼できる大人の存在がとても重要だと考えています。孤立感を抱えている子どもたちにとって、リ信頼できる大人の存在がどれだけ大きな力になるか——それを信じて、日々一人ひとりと丁寧に関わっています。
プライベートでは、車やバイクの運転が好きで、マニュアル車に乗っています。仕事の移動手段でもありますが、気分転換の時間にもなっています。
Q5. おすすめしたい○○を教えてください
ぜひ、多くの方に「ゆめの森」で実践している公教育のあり方を知っていただきたいです。
たとえば、子どもたちが自分でカリキュラムを選べるような仕組みです。これは、今の公立学校ではなかなか実現が難しいのが現実ですが、「ゆめの森」では自然なこととして行われています。
また、地域や人との関わりの中で、子どもたちは日々学びを深めています。こうした“当たり前”が日常になっている場は、実はそう多くありません。
これからの時代に本当に必要なのは、テストの点数だけではなく、「知識や知恵をどう使って目の前の課題を解決するか」という力です。「ゆめの森」では、そうした力が自然と育まれていくような取り組みがたくさんあります。ぜひ一度、見に来ていただけたら嬉しいです。

Q6. 関心のある事、分野
もともと「食」や「環境」に強い関心があります。
日本の食料自給率の低さや、気候変動による生産環境の変化を見ていると、これからの時代に持続可能な食のあり方をどう築いていくのか、という問いは避けて通れないものだと感じています。
大熊町にいると、「もっと海の資源を活かせないだろうか」と思うこともあります。たとえば、海の中で陸上植物を育てられたら面白いですし、海水をろ過して再利用すれば、水を循環させながらの水耕栽培も可能なのではないかと考えています。
こうしたアイデアの背景には、「そういう学びができる学校をつくってみたい」という想いがあります。自然を舞台にした教育、たとえば船の上が“学校”になってもいいんじゃないか、と。水産資源や養殖に触れながら学べる環境であれば、教室の中だけでは得られない経験がたくさんあると思います。
そういうスタイルがきちんと「学校」として認められるようになったら、学びの可能性はぐんと広がる。そんな未来に、少しでも貢献できたら嬉しいです。
Q7. あなたにとっての福島、大熊町
私にとって大熊町は、「新しい教育のかたち」を発信できる場所です。
ここで子どもたちと関わる中で、「ああ、ここから新しい形が始まるかもしれない」と感じる瞬間がたくさんあるんです。まだまだ未開拓な部分もあるからこそ、いろんな可能性が眠っていて、それがとても魅力的に映ります。
地域の中で子どもと関わりながら、一緒に楽しいことをつくっていける人が、もっと増えたらと思っています。たとえば、児童クラブにボランティアで来てくれるだけでもいいし、夏祭りやイベントで子どもたちと遊んでもらえるだけでも、子どもにとってはとても大きな刺激になります。
そうやって子どもたちが地域の中で笑顔で過ごせるような場所を、一緒に育てていける人が増えていったら、それが町の元気にもつながっていくんじゃないかなと思っています。
最近では、移住してくる方も少しずつ増えていて、地域に新しい風が吹いているのを感じます。
「教育」という言葉は少し堅く聞こえるかもしれません。でも、まずは子どもたちと関わってみるところからでいいんです。その中で、大熊町のあたたかさや、子どもたちが持っている力強いエネルギーを感じてもらえたら、とても嬉しいです。
◆編集担当より
いかがでしたでしょうか。取材を通じて、一人ひとりの得意や個性を大切にする姿勢が活動の軸になっていることが伝わってきました。学童保育だけでなく、不登校支援や地域イベントなど、多方面から子どもたちと地域をつなげている点が印象的です。今後、この活動がどのように広がっていくのか、とても楽しみです。